FNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFN

           メール・マガジン

      「FNサービス 問題解決おたすけマン」

================================================================

    ★第173号        ’03−04−25★

================================================================

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

     親近幻想

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

●小説を読み進んで行くうち

 

主人公の心に入り込み、いつの間にか好きになっている、、 てなこと、

あるでしょう? シリーズものが売れるのは、何より主人公の魅力ゆえ。

 

しかし惚れても相手はバーチャル、その親近感はひとときの幻想でしか

ありません。 比べて自伝や回顧録、ドキュメンタリーやノン・フィク

ションなどで生じる親近感には現実味が伴っている、、はず

 

だが普通、全く知らない人のは読むまい。 そしてその<知っている>

は多分、マスコミから生じたイメージ、即ち幻想。 それを確かめたい、

とか、膨らませたい、で読み、身に迫る記述に出会うたび、

 

岸田秀教授の言う<幻想の共有>に力がこもって来る。 主人公に自分

を重ね合わせて頷いたり、少々自信を深めたり。 ジャック・ウェルチ

を我が<好ましい人物>リストに加えたのもそんな具合にして、でした。

 

 

彼については雑誌記事やTVドキュメントで知るに過ぎず、誉めるだけ

の単行本は読む気にならず、でしたが、たまたま店頭で(前号でも引用

した)彼の自伝<我が経営>(上・下 日本経済新聞社)は

 

手に取ってパラパラ、そして<ノリル>なる文字が目に入ったのが運の

尽き、つい買ってしまいました。 それは新しいもの大好きのサーモ屋

が先駆けて採用した、GEの熱可塑性樹脂。

 

あれがウェルチの手で?! 急速に親近感が湧いて来たから不思議です。

そうか彼、現場人だったんだ、、 これ、読もう、、 と。

 

*   *

 

実はそれまで、彼に抱いていた<幻想>は良くない方でした。 いかに

利益追求が大目的とは言えエジソン以来の老舗、社名に<電気>を謳い

込んでいるGEから家電品一切を放り出してしまった張本人。

 

158号既述の<接点屋>当時、東芝は長年の大切なお客で、その東芝

は昔からGEと関係が深く、何につけてもGEの名が出される。 で私

の家電DNAに刻み込まれたGEへの親近感、、

 

それを断ち切られ、棄てられた気分、、 もまた幻想ですが、我が国で

東芝や日立が急に「家電、ヤメた」なんて言い出すことは考えにくい。

その本にも、「家電は長いあいだ、GEにとってかわいくて仕方のない

事業だった」(▼p.113)とありますから、アチラの消費者も面食らった

に違いありません。

            ▼今回の頁ナンバーは、すべて<上>のです。

 

*   *   *

 

しかし読むにつれ、実はウェルチ、常にアタリマエなことを迷わず実行

しただけだったのだな、と分かって来ます。 (多くの<歴史>と同様、

彼の語りも<彼の認識>で固められてはいるでしょうけれど)

 

「 <ニュートロン・ジャック>のあだ名を頂戴する何年も前に、私は

工場を吹っ飛ばしている、、」で始まる第3章では、失敗を次の成功に

つなげさせてくれた先輩への感謝と、

 

そのようにして体得した<上司のあるべき姿>や彼の信条を具体的な例

で語っており、臨場感甚だ濃密。 <ノリル>はそこに出てくるのです。

失敗を乗り越えて生み出したPPO樹脂、として。

 

初めからPPOに惹かれて入社した彼、爆発事故にもメゲず、持ち前の

押しで予算やポストを獲得し、新工場の建設に取りかかる。 ところが

突如、不測の重大欠陥が浮上、以後6ヶ月間は死に物狂い。

 

その聞くも涙の新素材が<ノリル>、だった(p.62)んですな。 同じ頃、

サーモ屋もかなり<死に物狂い>でしたがね。 

 

************

 

 

 

●思いがけず生じた親近感

 

の色眼鏡でウェルチを見直して行くと、、 おや、どうやらこの人とは

ウマが合いそうだ。 もちろんスケールは桁違いだし、レベルは段違い。

比べるのは烏滸がましいけれど、、、 どうせ<幻想の共有>ですから。 

 

たとえば72号や157号で披瀝した通り、サーモ屋は<営業マン>を

(結果的に)全員追放したわけですが、それは彼も、で、

 

 彼らは退屈な型どおりのプレゼンテーション、、仕事に対する情熱が

 まるで感じられず、あたりまえの質問にさえほとんど答えられない。

                             (p.80)

 私だったら1年以内に6人全員に辞めてもらう。 結局、5人が会社

 を去った。 (p.81)

 

そして自ら言う、

 これは明らかにただごとではない。 常軌を逸している。

 

サーモ屋もそう言われていたのかも知れない、私はアタリマエなことを

していたつもりでしたが、、

 

 

169号で私は<コンサルタント>に頼る気が無かったと申しましたが、

 

 戦略担当は社外に人材を求め、、、グレッグ・リーマンツを迎えた。

 私がその後、コンサルティング業界からスカウトした多くの人材の

 第1号だった。 私がコンサルティング業界が嫌いなことからすると、

 これはなんとも皮肉な話ではないか。 (p.89)

 

<人材>は認めるし、用いる。 が、<業界>はお断り。 分かります、

あれは<気休め>を売るショーバイですからな。 サーモスタットには

気休めなんか通じない。 それは<グループ・エグゼクティブ>に昇進

した1973年の彼においても同様、、

 

*   *

 

59〜61号、立て続けに<英語社員>をコキおろしましたが、彼も

 

 30歳のとき、私はアジアでの採用担当になった。 もちろん、私は

 日本語が話せなかった。 日本の文化もほとんど理解していなかった。

 それで案の定、落とし穴にはまった。 応募者のなかに英語の達者な

 人がいると、たいてい採用してしまう。 言語能力を「採用基準」に

 するのは、どう逆立ちしても最低の条件にすぎないと気づくまで、

 しばらく時間がかかった。 (p.92)

 

表と裏、視点は異なれど、サーモ屋の認識とピッタリ一致。 ペラペラ

だけの連中、アチラの人々に我が民族の値打ちを誤解させた罪、深いぞ。

 

*   *   *

 

私の<不安感>傾向は171号に記した通りですが、あのウェルチも?!

となると同病相憐れむの心境、むしろ愉快。 

 

 1981年、、、やっとのことで会長の職務についた。 会長になる

 までにじつにさまざまな経験をしてきたとはいえ、現実には口で言う

 ほど自信があるわけではなかった。 外からは自信たっぷりに見えて

 いたため、私を知っている人に言わせれば自信満々、自意識過剰な

 ほどで、決断力に富み、動きがすばやくたくましい男だと表現した

 だろう。 内心は不安でいっぱいだった。 (p.147)

 

オレはすべきことを誰よりも徹底的にやったんだ、と自分が納得できる

まで努力し、不安と戦う。 納得して、それなりの自信を抱く。 なら、

そう見えても不思議でないが、<満々>としか見ない人も多く、こいつ

オレのこと分かってないな、と嘆かされたものです。

 

*   *   *   *

 

そしてトップなら、<すべきことをする>以上の者でなくてはならない。

指示されて動く立場の人だって、<すべきことはしている>のですから。

 

自分が率いている組織を<こういうもの>にしたい、と念じ続けること

は、リーダーだからこそ可能なこと。 逆に、それが無くちゃリーダー

じゃない。 彼においては、

 

 、、どういう「感じ」の会社にしたいか、自分でははっきり意識して

 いた。 当時、私はそれを「文化」とは呼んでいなかったが、私が

 考えていたのはまさにそれだった。 (p.148)

 

GEを、、高速モーターボートのような企業にしたかった。 つまり

 動きが速く機敏で、しかもいきなり方向転換ができる、、、(p.149)

 

サーモ屋が世間並みに<3年倍増>しなかったので、オカシイと率直に

指摘してくれた人もいました(125号)が、我々の<different>さ

が分からなかったんでしょうな。 

 

ただの<消極的>だったら、発展的M&Aなど進んでしない。 それを、

○国興信所(当時)ですら「前経営者(私のこと)の意欲喪失により」

なんて印刷していた。 文字情報もウカウカ信じてはいけませんぞ。

 

************

 

 

 

●<ミーティング・ファシリテータ>

 

を活用して会議の効率化を、としたのは58号ででしたが、ウエルチが

それを思い付いたのは1988年。 「社員にとって利害関係のない社外の

人物」を「ファシリテーターと呼ばれる進行役」として

 

「オープンな雰囲気」で問題解決の論議を進めるのが<ワークアウト・

セッション>、「ワークアウトとは、文字どおり、不必要な仕事を取り

除くことを意味している」と。 (p.282/6) 

 

それによって、「全員が参加し、全員のアイデアが尊重され、リーダー

が人を管理するのではなく導く文化になっていた。 リーダーはコーチ

役に徹する---説教するのではない。 それがよい結果に結び付く」と。

 

まことに理想的な運びですが、Rational Process で<進行>させれば、

だいたいそういうことになります。 お求めあらば、<おたすけマン>

喜んでお手伝いに伺います。

 

 

<正見>や<正思>を説いたのは134号でのことでしたが、どうやら

ウェルチもお釈迦様の弟子、

 

 、、、自己欺瞞は組織全体を硬直させ、そこに働く人たちを馬鹿げた

 結論に導くことがある、、社員の目を現実に向けさせることが、最終

 的な解決策への第一歩である、、。(p.167)

 

また、上巻付録の講演は p.170/3 にも引用されているが、

 

 「テーマの第一は現実、、」、それは「、、簡単な話ではありません。

 、、希望や願望を込めた目で見るのではなく、あくまで世界をありの

 まま素直に理解してもらうというのは見かけほど簡単ではないのです」

 

だから、、 と彼はもちろん言ってないが元講師は敢えて言ってしまう、

Rational Process を用いれば<簡単>になりますよ、と。 

 

************

 

「これは教義集でもなければ、経営の指導書でもない。、、日々の積み

重ねから生まれてきた哲学だ。 自分にとって有益であったごく基本的

な考え方にこだわった。、、誠実さ、、単純明快なやり方が正しい、、」

                             (p.13)

 

元講師もそんなこと喋っていたのです。 Rational Process はまさに

<基本的な考え方>そのもの、それを一貫すれば<誠実さ>は保証付き。

<単純明快>でもあって、<正しい>リーダーぶりが発揮できますから。

 

<ニュートロン>、<ナンバーワン・ナンバーツー>、<サービス>、

<グローバル>、<シックスシグマ>、<Eビジネス>、はウェルチの

名に冠せられた<肩書き>?の変遷(p.11)ですが、

 

それらが示すのは、彼がその時々の<必要>を的確に掴んでいたこと、

自ら先頭に立って全社に徹底し、<変革>を成し遂げたこと、それが

誰の目にも明らかだったこと。 そして、

 

そんなウェルチに誰もがなれるわけでないことは言うまでもありません

が、<ウェルチのように>なれる技法ならすでにある、ということ。

 

                          ■竹島元一■

 

  ■今週の<私の写真集から>は ★GE, Appliance Park★

================================================================

FNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFN

                         ■ホームページへ戻る